先天性股関節脱臼について 院長コラム#042
2025.05.20 院長コラム
院長の吉冨です。今回は先天性股関節脱臼についてです。最近、赤ちゃんの一ヶ月健診が制度化され、標準化されたことにより、より詳細な赤ちゃんの評価を求められるようになってきています。その中に、先天性股関節脱臼に関連する部分がありますため、その解説と当院の方針を示したいと思います。
先天性股関節脱臼とは
生まれた時から股関節が正常な位置からはずれていたり、股関節が不安定な状態にあることを指します。女児に多く、逆子で生まれた場合や、ご家族内に先天性股関節脱臼を患った方がいらっしゃる場合に発症頻度が高いとされています。早期発見・早期治療が重要で、適切な管理を行うことでほとんどの子供が正常に成長します。
赤ちゃんの病気は生まれてすぐにわかるものもありますが、股関節の脱臼は生まれてすぐというよりも、しばらくしてからわかることがほとんどです。その理由としては生まれた後、股関節に負担のかかる状態が持続することによって脱臼をおこしてしまうことが考えられています。脱臼を起こしてしまった場合、必ず治療をしなければならず、状態によっては手術が必要になることもあります。また大人になってもその影響が続き、長期に加療を必要とすることもあります。
股関節脱臼の予防
赤ちゃんの股関節脱臼は、前述の通り生まれた時にすでにはずれている場合もありますが、ほとんどは生まれた後ではずれていきます。そのため、脱臼予防について正しい知識を持って赤ちゃんと接することができれば安心です。
赤ちゃんはO脚で、カエルのようにお股をM字に開いているのが正常で、股関節の動きを自由にさせてあげることはたいへん良いことです。おくるみ等の掛け物や厚手の洋服などで股関節の動きを制限するような状態を維持したり、O脚を直そうと脚(下肢)を真っすぐに伸ばしたり、ひざにタオルなどを巻き付けたりするようなことは股関節には大きな負担がかかるので控えてください。
また、抱っこをするときにも注意が必要です。あしが伸びた状態ではなく、お股を開いた状態で抱っこをするたて抱きがベストです。よこ抱きやスリングの使用は股関節が内股に閉じることが強制されるため、股関節にとっては負担がかかります。スリングなどを使用する場合は、お股が開くように注意すると良いです。
リスク因子
前述しましたが、先天性股関節脱臼のリスク因子として下記のようなものがあります。
- ①家族歴:リスクが5~12倍
- ②女児:リスクが4~9倍
- ③逆子(妊娠後期の骨盤位):5倍
早期発見・早期治療のために
日本小児整形外科学会では上記のリスク因子3つのうち2つ以上該当する場合は、専門医療機関で検査を行ってもらうことを推奨しています。これら3つのリスク因子は生まれたときには分かっていますので、乳児健診(生後3-4ヶ月)を待たずに、早期に受診することができます。また、出生時や一ヶ月健診時に股関節の開排制限や左右差の有無を確認し、異常が疑われた場合は専門医療機関で診察してもらう必要があります。
これらのことから、当院では2025年5月よりリスク因子が2つ以上ある場合や股関節脱臼を疑う所見がある場合には制度化された赤ちゃんの一ヶ月健診に基づき、一ヶ月健診終了時に専門医療機関への紹介を行うこととしています(赤ちゃんの退院時でないことにご留意ください)。
以上、簡単に先天性股関節脱臼について解説してみました。
先天性股関節脱臼に関して、ご心配やご質問などがある場合はかかりつけ医にお尋ねください。