新型コロナウィルス(COVID-19)と妊娠 院長コラム#004

2021.01.21 院長コラム

院長の吉冨です。今回は新型コロナウィルス(以下COVID-19)と妊娠について現時点での知見を簡単にまとめてみました。
参考になれば幸いです。

 

①妊娠中にコロナに感染しやすいかについて

妊娠中は感染しやすい?重症化しやすい?と聞かれることがありますが、妊娠中の感染報告例はそれほど多くはなく、わかっていないことがまだまだたくさんあります。
海外の報告データでは、経過や重症度に関しては妊娠していない同年代の女性と変わらなかったとされていますが、妊娠特有の免疫バランスや心肺機能の変化が影響する可能性はあり得ますので、念には念を入れ、妊娠中はいっそうの感染防止に努める必要があると思います。

 

 ②赤ちゃんへの影響について

感染した場合に赤ちゃんへの影響は?という質問もよくお受けしますが、今のところ赤ちゃんの先天性異常や流産のリスクが高くなるという報告はありません。
しかし、感染が流行してからそれほど月日が経っていないため、今後の報告を待つ必要があると思います。

 

③感染しているかも、と思ったら

感染を疑う症状がある(37.5度以上の発熱がある、味がよくわからない、喉の痛みや鼻水などの感冒症状があるなど)場合は早めに帰国者・接触者相談センターにご相談ください。

赤ちゃんが心配だからと産婦人科を受診しないでください。
産婦人科には多くの妊婦さんがいますし、②にも書いているとおり、感染したからと言って、赤ちゃんに直ちに何か起こるわけではありません。節度ある行動を心がけてください。

 

④感染が判明したら

妊婦さん本人の感染が判明した、もしくは濃厚接触者であった場合、2週間の自宅待機が必要です。
また、PCR検査で陰性であることも確認する必要があります。
産婦人科の受診時期についてはかかりつけの産婦人科と相談されてください。

 

⑤ワクチンについて

ワクチンについて、安全性や有効性のデータがまだ不十分な部分はありますが、概ね効果は高いです。
効果の持続期間などは全く不明です。
副作用としては、接種後の局所部位反応の発現頻度が高いといわれており、重篤でない全身性の有害事象(倦怠感、不快感、筋肉痛、頭痛等)が高頻度(数十%以上)で発現するとも言われています。

現在行われているワクチンの臨床試験において、妊婦は対象から除外されていることから、妊婦に対する安全性・有効性は現時点では明らかではありません。

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※COVID-19 mRNAワクチンについて日本ではまだ方針が定まっていませんが、以下、海外の報告で参考となるものを抜粋してみました。
・妊婦に対してCOVID-19 mRNAワクチンの安全性を証明するデータはなく、妊婦にワクチン接種を推奨する根拠はないが、ワクチンの性質上は悪影響を及ぼす可能性は高くない。
COVID-19感染で重症化しうる基礎疾患をもつ方が妊娠している場合はワクチン接種を考慮しても良いかもしれない。
・ワクチン接種前に妊娠していないか確認する必要はなく、ワクチン接種後の避妊も必要ない。
・授乳中の安全性を証明するデータはないが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、米国産科婦人科学会(ACOG)、英国予防接種・免疫合同委員会(JCVI)などの機関ではmRNAワクチンは授乳中の乳児にとってリスクとは考えられていない。