妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ⑥:麻疹(ましん) 院長コラム#034

2024.02.12 院長コラム

院長の吉冨です。今回は妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ第6回目、麻疹についてです。

院長コラム_麻疹

麻疹という感染症をご存じでしょうか?「はしか」と言う呼び方の方がなじみがあるかもしれません。

 

麻疹とは

 麻疹は感染力の強いウィルスで妊娠中に感染すると赤ちゃんに直接影響を及ぼすと言うよりも妊婦さん本人が重症化することがあり、注意が必要です。感染経路は空気感染や飛沫感染、接触感染などがあり、初めて麻疹に感染するとほぼ100%発症します。一度、麻疹を発症した人は麻疹への免疫ができるため、再度麻疹を発症することは基本的にはありません。麻疹の根本的な治療法はなく、症状に治して対症療法を行うことになります。

 

麻疹の症状

 麻疹の症状にはカタル期と発疹期の2つの段階があります。

・カタル期:発熱や咳、鼻水、結膜炎などといった症状が現れ、口の中(ほっぺたの内側)にコプリック斑という白い斑点状のできものができるのが特徴です。
・発疹期:カタル期を過ぎた後にいったん解熱し、再度発熱します。また、同時に顔や首、耳の裏側から全身にかけて発疹が広がります。重症化すると肺炎や脳炎などをおこし、最悪、死に至ることもあります。

 

妊娠中に麻疹に感染したら

 麻疹は妊娠中に感染しても、赤ちゃんに先天性の異常が現れることは少ないといわれていますが、流産や早産のリスクが高くなる可能性が指摘されています。また、妊婦さん本人の症状が重症化し、重篤な合併症を引き起こす可能性が高くなる恐れがあります。

 

麻疹の抗体検査

 麻疹に一度感染すると、免疫(抗体)ができるため、その後に麻疹を発症することは基本的にありません。そのため、麻疹の抗体を持っていれば安心です。過去に麻疹に感染したことがあったり、ワクチンを接種していれば、抗体を持っている可能性が高いです。一般的に、妊娠中に麻疹の抗体検査を行うことは稀で、当院でも基本的には麻疹の抗体検査を行うことはありません。そのため、過去に感染したかどうか、ワクチンを接種したかどうかわからないという場合には、ご両親に確認してみたり、ご自身の母子手帳をチェックしてみると良いかと思います。予防接種歴のページに麻疹ワクチンという単語やMMRMRという単語があれば、ワクチンを接種していると推測できます。また、感染歴についても母子手帳に記載があるかもしれません。それでも、感染したかどうかわからなかったり、ワクチンを接種したかどうかわからなかったり、麻疹に対する不安が強い場合は麻疹の抗体検査を行って、抗体の有無を調べることは可能です。

 

麻疹の予防にはワクチン接種が重要

 麻疹は予防接種で防ぐことが可能な感染症です。麻疹を予防する最も有効な手段はワクチン接種です。麻疹は感染力が強く、空気感染もするため、手洗いやマスクのみでは完全には予防できません。また、症状に対しては対症療法が中心となるため、予防することが重要となります。しかし、妊娠中は麻疹ワクチンを接種することができないため、妊娠前に抗体の有無について確認しておき、必要であれば予防接種を受けておくことがベストです。

 

妊婦さんの抗体と赤ちゃんへの影響

 妊婦さんが麻疹の抗体を持っている場合、お腹中の赤ちゃんにも麻疹の抗体が受け継がれることから、生後しばらくは麻疹に感染することはありません。抗体のない母親から生まれた赤ちゃんは、ワクチン接種前に麻疹にかかってしまう恐れがあり、注意が必要です。

 

抗体を持っていない妊婦さんの対処法

 妊娠中はワクチン接種ができないため、なるべく麻疹にかからないように注意して生活することが大切です。以下のような点に注意すると良いと思われます。

・規則正しい生活をこころがけ、体力・免疫力低下を防ぐ
・人混みを避け、人前ではマスクをする
・こまめに手洗いをする

 

以上、簡単に産婦人科医の視点からの麻疹について解説してみました。

麻疹に関して、ご心配やご質問などがある場合は医師にお尋ねください。