妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ⑤:インフルエンザ 院長コラム#027

2023.01.20 院長コラム

院長の吉冨です。今回は妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ第5回目、インフルエンザについてです。
ここ数年はコロナ感染対策がインフルエンザ感染対策にも有効であったため、23年は流行がありませんでした。しかし、最近はコロナ感染対策も緩和され、インフルエンザが流行してきています。
妊娠中は赤ちゃんへの影響も合わせて気になっている方が多いように思いますので、注意喚起も含めて正しい知識を身に着けてもらおうと思います。

 

妊娠中にインフルエンザにかかってしまったらどうすればよいのか?

妊娠中の正しいインフルエンザの対処法(下記)を理解し、不安を取り除きましょう。

 

妊娠中にインフルエンザにかかってしまったら赤ちゃんに影響はある?

一般的にインフルエンザウィルスそのものがおなかの中の赤ちゃんに影響することはほとんどないと考えられています。インフルエンザに伴うお母さんの症状自体が赤ちゃんに影響を与えることがありますので症状への対処を優先しましょう。また、妊娠中、特に妊娠後期はお母さんの症状が重症化しやすいので早めの対応が必要です。

 

各症状への対応

発熱

38度以上の高熱になると、赤ちゃんも体温が上がり、心拍が早くなったり、ぐったりします。解熱剤(アセトアミノフェン)の使用や体を冷やすなどして熱を下げてあげてください。

お腹が張りやすくなり、切迫早産が気になるところですが、通常問題になることは多くありません。出血や破水した場合はかかりつけの産婦人科にご連絡ください。

肺炎

妊婦さんが重症化しやすく、命に関わります。重症の場合は入院して治療する必要があります。

 

妊娠中に抗インフルエンザウィルス薬は使っても大丈夫?

抗インフルエンザウィルス薬であるタミフルやリレンザなどの治療薬は、妊娠中でも処方されます。妊娠中に抗インフルエンザウィルス薬を服用しても、おなかの中の赤ちゃんへの影響はないとされています。むしろ妊娠中のインフルエンザの重症化の方が抗インフルエンザウィルス薬の副作用よりも重大であると考えられています。ですので、家族内でインフルエンザにかかった人が出てしまった時には、治療薬を予防的な意味で飲むことが推奨されています。

 

医療機関はいつ、どこにかかればいい?

抗インフルエンザウィルス薬は発症してから48時間以内に飲むことで重症化を避けられるメリットがあります。家族の中にインフルエンザにかかってしまった人がでたり、発熱や関節痛、悪寒などのインフルエンザを疑う症状がある場合はお近くの一般病院(クリニック)を事前連絡の上、受診してください。
このときの注意事項で最も大切なことは産婦人科を受診するのは厳禁ということです。産婦人科には免疫が弱くなった他の妊婦さんや生まれたばかりの赤ちゃんが大勢います。ですので、インフルエンザが疑われる症状がある場合や家族にインフルエンザが出た場合は必ず、内科を受診し、検査を受けて、適切な対応を取ってもらってください。この時、処方されたお薬に不安がある場合はかかりつけの産婦人科にご相談されると良いかと思いますが、基本的に妊娠していることを内科に告げて処方をしていただければ多くの場合は問題ないかと思います。

また、おなかの中の赤ちゃんのことが気になるということで、産婦人科の受診を切望される方がおられますが、よほどのことがない限りは産婦人科の受診は控えていただくようにお願いします。たとえ、産婦人科の受診をしても赤ちゃんの状態で確認できるのは心拍の有無くらいであり、赤ちゃんがどのような状態にあるかなどは詳しくはわかりませんし、対処のしようがありません。得られるものがほとんどないにもかかわらず、他の患者さんおよび職員への感染リスクが懸念されることはやはり避けなければならないと思います。

 

インフルエンザ感染後の産婦人科への受診のタイミングは?

一般的には「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで」となることが多いかと思いますが、病院によって独自のルールを設けている場合があります。かかりつけの産婦人科にお問い合わせください。

 

インフルエンザにかからないようにするための予防や重症化を防ぐためにできることは?

インフルエンザ流行期は人ごみをさけてください。また、外出される場合はマスクを着用し、適宜うがい、手洗いを行ってください。また、重症化を防ぐ目的でインフルエンザの予防接種は受けたほうが良いです。赤ちゃんへの影響が心配であったり、効果に疑問を感じて予防接種を行っていない方もいるかもしれませんが、インフルエンザは重症化を避けることが大切ですので、是非予防接種は受けてください。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので妊娠中どの時期に接種しても赤ちゃんに影響はありません。

妊娠中のインフルエンザについて正しい知識をもって冷静に対応してください。また、繰り返しになりますが、解熱し、外出の許可や産婦人科受診の許可が出るまでは妊婦健診を含め、産婦人科への受診は控えてください。
以上、簡単に産婦人科医の視点からのインフルエンザについて解説してみました。
参考になれば幸いです。