妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ②:梅毒 院長コラム#022

2022.08.01 院長コラム

院長の吉冨です。今回は妊娠中に気をつけたい感染症シリーズ第2回目、梅毒についてです。
近年、梅毒に罹る若い女性が急増していると言われており、この機会にわかりやすくまとめてみました。

 

梅毒とは

 梅毒というと昔の感染症と思われる方も多いのではないでしょうか?1943年にペニシリンという抗生物質での治療が成功して以来、激減した感染症ですが、その後、何度か再流行が起きています。日本では感染症法で5類感染症に指定されており、全数報告対象の感染症です。
病原体は梅毒トレポネマという菌です。感染経路は多くの場合、粘膜接触を伴う性行為とされており、いわゆる性感染症の代表的な疾患です。
梅毒の症状はその他の感染症とは異なり、経時的に様々な症状が出現します。症状と症状の間に軽快する時期があり、診断の遅れや治療開始の遅れが生じやすいことが特徴です。

以下にそれぞれの梅毒の症状と感染からの時間を示します。

1期梅毒:初期硬結(しょきこうけつ)、硬性下疳(こうせいげかん)

 感染からおよそ3週間後に症状出現
 性器や肛門、口唇などに硬いしこり(初期硬結)ができます。痛みなどはありません。そしてその初期硬結に潰瘍(硬性下疳)ができてきます。症状は治療をせずに放置をしても自然に消失しますが、菌は身体の中に潜伏したままです。

2期梅毒:バラ疹、脱毛、扁平コンジローマ、粘膜疹、発熱、倦怠感、筋肉痛など

 感染からおよそ3ヶ月後に症状出現
 手のひらや足の裏を含む全身に多彩な症状が出現します。第1期梅毒と同様に症状は治療をせずに放置をしても自然に消失します。

3期梅毒:ゴム腫

 感染からおよそ310年経過で症状出現
 皮膚だけではなく骨や筋肉、肝臓や腎臓などの臓器にも硬いしこりやゴムのようなできもの(ゴム腫)ができてきます。鼻骨の周辺にできた場合は鞍鼻(あんび)と言われ、鼻が欠損します。江戸時代には鼻が落ちる病気と言われていたようです。

4期梅毒:心血管梅毒、神経梅毒

 感染からおよそ10年以上経過で症状出現
 心臓に血液を送る冠状動脈や心臓の弁、大動脈に異常(心血管梅毒)を来し心不全などを引き起こし死に至ります。また、脳や脊髄が冒され、頭痛や発語障害、記憶障害、妄想、感覚障害、排尿障害などが進み全身麻痺(神経梅毒)に至ります。

梅毒の治療は基本的にはペニシリン系の抗生物質を長期間投与することとなっています。

 

妊娠中に梅毒に感染していたらどうなるの?

 梅毒未治療の場合、初期梅毒では約40%が胎児死亡や新生児死亡に至るとされており、妊娠前4年間の梅毒罹患では約80%が胎内感染を起こし、赤ちゃんに先天梅毒の症状が見られるとされています。先天梅毒には早期先天梅毒と晩期先天梅毒があり、早期先天梅毒は2期梅毒疹や骨軟骨炎などの症状がでます。晩期先天梅毒は乳幼児期には症状がなく、学童期以降に眼に炎症症状や難聴、歯の異常などがでてきます。

 

妊娠中の梅毒検査について

 妊娠初期に梅毒スクリーニング検査を行います。多くの場合は初めての妊婦健診の時に助成券を使用して検査を行うことになります。梅毒のスクリーニング検査にはいくつかの方法があり、内容が専門的すぎるのでここでの解説は割愛しますが、妊娠初期の梅毒の検査はスクリーニング検査であり、たとえスクリーニング検査で異常がでたとしても過度に心配する必要はなく、精密検査を行いきちんと診断することが重要です。梅毒のスクリーニング検査異常の原因として、現在は完治している治療済みの梅毒や生物学的偽陽性と言って梅毒に感染していなくても検査上陽性となることがあるからです。

 

妊娠中の治療について

 梅毒感染と診断された場合、速やかに抗生物質で治療を行う必要があります。妊娠初期での治療開始は先天梅毒の発生防止効果が高いと言われています。基本的にはペニシリン系の抗生物質を使用しますが、アレルギーなどで使用できない場合は他の抗生物質を使用することもあります。治療期間は数週間から数ヶ月と長期間に及び、適宜効果判定を行います。また、治療後に再感染しないようパートナーの梅毒検査も行っておくことが重要です。分娩後は赤ちゃんの検査も行い、適宜小児科のフォローもしておくと安心です。

 

以上、簡単に産婦人科医からの視点で梅毒について解説してみました。

梅毒に関して、ご心配やご質問などがある場合は医師にお尋ねください。