妊娠中の夫婦生活について 院長コラム#020

2022.05.23 院長コラム

院長の吉冨です。今回は妊娠中の夫婦生活、つまり性生活について書いてみようと思います。

相手が医療従事者とはいえ、妊娠中の性生活について色々と聞いてみることはとても勇気のいることだと思います。
また、だれにも相談できずに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?そこで今回、医学的な視点や臨床経験などから妊婦の性生活について私見を述べてみようと思います。

妊娠中の性行為が実際どの程度、妊娠経過や胎児へ影響を及ぼすのかについて、今まで様々な研究がなされていますが、未だ明確な結論が出ていません。
その要因として、性生活について詳細かつ正確な情報を聞き出し把握することは困難であることと、妊娠したことによって性生活そのものに影響を及ぼすことが考えられます。

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性行為そのものによって起こる影響

男性の性器等を膣内に挿入することで、物理的に子宮を刺激することになり子宮が収縮します。また、オーガズムを感じたり、乳頭を刺激することでも子宮が収縮します。さらに、子宮内に細菌が入り込み、早産の主な原因といわれている絨毛膜羊膜炎を引き起こす可能性があります。

 

精液が及ぼす影響

精液中にはPGEや様々なサイトカイン、好中球などが存在します。これらの成分は子宮を収縮させたり、子宮の出口を柔らかく(頸管熟化作用)したり、赤ちゃんを覆っている卵膜を破れやすくしたりすることがあります。

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以上の様に性行為そのものや精液には医学的に妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性が考えられてはいるのですが、冒頭でも述べたように性行為と早産・破水についての因果関係は様々な研究結果から未だ明確な結論が出ていません。一方、禁欲によるストレスによってかえって切迫早産が誘発されるとの報告があったりもします。

これらのことを踏まえて私見を述べてみます。

まず、子宮が収縮してしまうことについてですが、例えば授乳中の妊婦さんは乳頭を刺激するため、以前は切迫流産や切迫早産を引き起こす可能性があるとして、妊娠中の授乳をやめるように勧められていた時代がありましたが、現在では妊娠経過に問題がない場合は必ずしも授乳をやめる必要は無いとされています。

性行為も同様に妊娠経過に問題なければ子宮は収縮しやすくなりますが、問題ないのではないかと考えています。

しかし、乱暴な性行為を行ったり、お腹に負担のかかる姿勢になったり、清潔に扱わなければ、やはり妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性はありますので、優しく、無理なく、清潔にお互いを思いやりながらの性生活、コミュニケーションを図っていくのが良いかと思います。

また、清潔に行うという意味でも精液が妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性があることからも、膣内に挿入する場合はコンドームの着用を心がけると良いかと思います。